両眼視を考慮したプリズムメガネの眼内レンズ
人間の眼内には、角膜と水晶体という二つのレンズが平行に内蔵されています。
その水晶体が加齢等で白く濁ってくる症状が「白内障」です。
その白内障を患った水晶体を取り除き人工的に作成した人口水晶体(ICL)を眼内に埋め込む手術が白内障手術です。
医療の発達で最近では日帰りでも手術が可能になりました。
一般的な水晶体レンズの屈折力は20ディオプトリーあるので、眼内レンズの度数を調整する事により、近視や遠視の状態を改善する事が可能になります。
今まで度の強いメガネが必要な方が、白内障の手術をしたことによって遠方用のメガネが不要になる事もあります。
手術前に、眼科医との打ち合わせで、
①今のメガネのままでいける眼内レンズの度数
②遠方がよく見えるようにする眼内レンズの度数
③近方がよく見えるようにする眼内レンズの度数
④遠くも近くもまあまあ見える眼内レンズの度数
⑤片目が遠く、片目が近くが見える眼内レンズの度数
今現在のメガネや目の状態でも変わってきますが、両眼とも手術する前提で一般的に多い順番に並べると④②③①⑤の順番になるでしょうか。
問題は、
A.メガネの度数が強い場合で、片眼だけ手術が必要な場合
B.眼位異常で両眼視のためにプリズムレンズを装用している場合。
A.は片眼だけ裸眼で見えるような眼内レンズの度数にした場合、右眼と左目の度数差が多くなりすぎて色々な弊害が出てしまうので、手術をしていない度数の強い目をコンタクトレンズによる矯正が必須になり、メガネでの矯正が難しくなります。
今回はB.の両眼視維持のプリズムメガネを常用している方の事例を紹介します。
このブログでは10年前から散々使用している説明図です。
人間の眼は左右二つあるので、見る物に左右眼が真っすぐに向くのですが、左右の目の向きが大きく違うと、無理して向く(斜位) 無理しても片目が向けない(斜視)になり、疲れやすい眼位となっています。
そうゆう場合は、上の図の様に最適なプリズムレンズをメガネレンズに装着する事により、両眼で見る事を快適にすることが可能になります。
白内障により眼内レンズは、片眼づつによる度数の矯正は可能なんですが、プリズム度数の入った眼内レンズやコンタクトレンズは現在存在しないので、両眼視のためのプリズム度数を常用している場合には、眼内レンズで度数だけ矯正しても、プリズムメガネは必要になります。
また・・・・
白内障の術後は眼球の状態が安定していない為、度数が変化する事がある事から数カ月は間を開けないとメガネを作ってもそのレンズが無駄になる場合があります。
遠近両用レンズやプリズムレンズは受注生産品となっているため制作に1週間ほど時間がかかります。
で今回のケース
前置きが長くなったので、超割愛して・・・・
-6.5Dぐらいを-3.0Dぐらいに、眼内レンズ度数を調整して矯正数を落とした事例です。
度数は緩くなりましたが、プリズム度は残るので・・・・
別作レンズが仕上がるまでは、↑を利用して
プリズム度数はそのまま残して、近視の度数だけを落としました・・・・
色々と複雑な事を考えての結果ですが、書いても意味が伝わらないだろうし、解る方にはこの写真だけで理解できるはず・・・・
大きなプリズム度が入ったメガネを常用している方の場合の白内障手術は、①今のメガネのままでいける眼内レンズの度数にした方が一番良いように思いますが・・・・
「ちょっとでも度数を緩くしたい」心理も良く理解できます。
が、大きいプリズム度数は、近視等の基礎度数が少ないと、大きいプリズムが入りにくくなる場合もあります。
白内障の手術で眼内レンズの度数を考える場合、医師だけではなく、手術前にかかりつけの眼鏡店にも相談する事をお勧めいたします。
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