不同視、不等像視、とプリズム効果 パートⅠ
僕がこの眼鏡業界に入った約三十数年前の常識は、「左右の度数差が2.0D(ディオプトリー)あると、使いづらいメガネになるから、2.0Dまでの差になるように度数を決めろ」と教えられました。
一応根拠は、角膜・水晶体の屈折率と角膜から網膜までの距離を考慮すると、左右の像の大きさの違いが5%以内にしないといけなくて、その左右度数差が±2.0Dだった気がします。
もしかしたら、今でも先輩からの教えに疑いなく従っていたら、その通りにしている眼鏡店があるかも知れません・・・
幸い、疑りぶかい曲がった性格の悪い根性の僕は、斜めからも物事を見るようにしています。
(それって良い事なのか?)
最近の左右の度数の考え方は、「2.0D以内にする」わけでも無く「左右の視力を揃える」のでもなく、「左右の調節を揃える」となっています。(解りにくいですね)
「左右の視力を揃える」は極端な例は、右眼の最高視力が1.2で左目の最高視力が0.9だった場合、右眼の度数を落として0.9にして両目の視力を揃える・・・・
のですが、そうしてしまうと、近方視した場合、右眼での焦点距離と左目の焦点距離が合わなくなってしまいます(調節力が左右同じ場合)
同じように、不同視で左右差を勝手に2.0Dまでにすると、左右の近方焦点距離がおかしくなる場合があります。
左右の調節を揃えるとは、ピントの合う焦点を網膜上に合わせ(完全矯正値)左右同じバランスで装用値を決定すれば、近用の焦点距離(調節)が合うという事になります。
たまーに、お客様が自身で、左右交互に見て片方の見え方が悪いとおっしゃられる場合がありますが、左右の矯正視力差がある場合は、あえてそうなっている場合もあります。
ここまでが、長ーい前置き・・・
今回の事例紹介です。
RV=(1.0)S±0.0 Δ1.25IN
LV=(1.0)S-3.5 Δ1.25IN
となっているんですが・・・・
問題は右眼が平面(度無し)なんですね・・・
右眼は裸眼で、1.0以上あるため普段の生活は問題なく普通に過ごしていて、メガネも作った事が無いんでしね・・・
ま、普通はメガネ屋に来ないですよね・・・
それでも、見えにくさを感じてか、ご来店いただいたのです。
この度数で問題なのは、不等像視より、視線がズレた場合のプリズム効果
メガネはど真ん中の光学中心だけで見ている訳では無いのです。
この場合は、上下のプリズム効果
光学中心より上方で見ると、度数の無い右眼はほぼプリズムが発生しないのに対して、左目はベースUPのプリズム効果が発生するし、下方視は反対にベースダウンのプリズムが発生します。
(レンズはプリズムの集合体)
(このプリズム効果を利用して僕の特許が取れました)
また、長期間(たぶん生まれてからずっと)遠方を右眼で、近方を左目で見ていた(モノビジョン)為か、両眼視機能が不全なんです・・・
輻輳近点も遠く、目の動きもぎこちない・・・
メガネを作る事は簡単に出来るのですが、使いこなすのは本人の努力が無いと使いこなせないと思います。(無責任に販売すれば売り上げだけは上がるのですが)
今回は度付き偏光サングラスを作りにきてくれたのですが・・・
普段から同じ度数のメガネを常用しないと、とてもかけこなせません・・・
(度の入らないサングラスにしてしまえば、問題無いのですが)
で、通常のメガネも同時にお買い求めいただきました!!
(決して押し売りした訳ではありません)
昨日お渡ししたのですが、お渡し前に目のストレッチをしてからかけてもらうのですが、輻輳近点も眼の動きも測定時よりも凄く良くなっていて・・・・
「ん?ビジョントレーニング的な事してた?」と伺うと
「スマホを見る時に両眼を意識してみていた」との事
検査時には両眼同時視・両眼融像視までは出来るようになったけど、偏光板を用いた両眼立体視がどうしても出来なかったのが、新しいメガネでは凄い時間がかかったけど出来るようになりました。
(本人が苦労して見えるようになった(立体視)のに、後から入って来たお母様が簡単に答えた(;’∀’))
https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/amblyopia
↑弱視の場合、臨界期(10歳頃まで)に見る機能を付けないと見る機能が損なわれるのが弱視
(僕がこの業界に入った約30年前には、結構な割合でいらしゃいました)
(現在は3歳児検診等で注意深く確認していますので、弱視自体はほとんど見受けられる事が無くなりました)
(現代では弱視はほぼ見なくなりましたが、両眼視機能不全はたまにあります)
弱視同様、臨界期までに両眼視機能を脳が覚えない場合、立体視は後天的に獲得できるのか?
との議論がありますが・・・・
誰かその答えを知っていたら教えて下さい・・・・
(動物実験が出来ない)
今回、お渡し時に偏光板を使用しての立体視が不良だった場合、長期での経過を確認してみたかったのですが、両眼視を整えれば立体視が確認出来たので、たぶん立体視(両眼視機能)には臨界期は無いような気がします(誰か教えて・・)
水平プリズムを入れているのは、長年両眼視をしていなかったため(斜視状態)BIΔを入れた方が両眼同時視や融像視が出来やすくなったからです。
パートⅡに続きます・・・
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