技術的お話
遠近両用のインセット
「遠近両用のインセット」でググッテ見ると2年前の当店のブログが2番目に出てくるほど、マイノリティな話題です・・・
人間の目は左右に二つあって、近くを見る時に「寄り目」をする事により、左右の目の間隔が遠方視している時より短くなります。
(僕がこの業界に入った三十数年前は遠方PD(左右の目の幅)と近方のPDを直に物差しで測定するか、遠方からだいたい2㎜ぐらい狭くなるはず・・・だった気がします。
要は、遠くを見る時の目の幅と近くを見る時の目の幅が違うのが問題なので、その幅の違いをしっかり考慮しましょうネが、遠近両用のインセット
数字が得意な方なら、ピタゴラスの定理(三平方の定理)で遠方視の目の幅さえ解れば近方視の目の幅も簡単に計算出来ます。
例題・遠方視の左右の眼鏡での目の幅(PD)が60㎜の方が40㎝先を見る時のメガネのPDは何㎜になる?(眼鏡は角膜から12㎜離れていて眼球の回旋点は角膜から13㎜内側とする)
(眼鏡作製技能士の国家検定に4択で出るかも知れません)
図と計算式にするとこんな感じ
25:388=X: (30-X)
(丁寧に書くと【(12+13):(400-12)= X:(60÷2 - X)】)
X≒1.82
遠方PDからX(1.82)×2を引くと、60-3.64=56.36
で近方PDは56.36㎜が正解
遠近両用レンズインセット量はXの1.82
但し遠近両用で遠用度数が無い状態
作業距離400ミリの右の図の片眼PDが30㎜で遠用度数が0の地点の数値も1.8
PDが広い方は当然輻輳が沢山必要です。
あと、遠用度数が入ればインセット量も変化して、プラスレンズの場合にはインセットが多く必要で、マイナスレンズの場合はインセットが少なくなりますね・・・
計算式は
I=P/(1+(1+/25-R/100)×(L-12))
この参考インセット量の計算式は、ドイツRAL-RG915を参考に遠用度数のプリズム効果を考慮して算出している計算式だそうですが・・・・
昔のバイフォーカルレンズ(二重焦点)を作る時の計算式なので、近方の度数を考慮した方が良い気がしますが・・・・・・
で・・・・
ガリレオの湯浅教授ばりに色々計算してみました・・・・
俺じゃ無く物理が得意な息子が・・・・
僕としては輻輳した幅の度数によるプリズム効果だと思っていたインセット量ですが、度数だけで計算するともっと近視と遠視のインセット量の差がでないといけないはずですが、上の表を見ても「-9.0D」と「+3.0D」のインセット量の差が少ない
確かに輻輳幅に対して光学中心を持ってくれば、度数によるプリズム効果よりも視線の角度によるプリズム効果の方が重要になるのかな・・・
となれば、両眼視機能を考えた時に、両眼視機能を考慮した遠用と近用のプリズム度数を変える事もこのインセット量で調整する事も可能になる気がする!!!
大変申し訳ありません。
完全に僕が勘違いをしておりました。(上の線で被せた所)
後日追記
そもそもインセットってなぁに?
NIKONレンズの場合
レンズ上部の丸い所が、遠用の度数が入っている所で、そのちょい下の十字の所が眼の中心がくる所で、下方部の長丸の所が近方度数が入ってる所になります。
レンズ袋に印刷されている通り、このレンズの場合、十字の所から真下に12㎜(累進帯長)降りて内側に2.1㎜いったところに近方の度数が入っています。
この2.1㎜がインセットになるのです。
で、度数は内側(鼻側)に2.1㎜インセットされていますが、あくまで度数だけであってプリズム度数は考慮されていません。
ムズイでしょ・・・・
遠近両用等の累進レンズって、どのメーカーさんも上の写真の様にマーキングされていて、そのマーキングはレンズの枠入れ加工後に拭き取れるようになっていて、レンズメーターで確認する事はあまりありません。近方の度数はなおさらです。
当店の累進レンズの取引量が多い、HOYAさんとNIKONさんに聞いてみました。
インセットについての質問の仕方が悪かったのか、なかなか理解してもらえません。
もしかしたら僕と同じ勘違いをしてるのかなと思いながら聞いても要領を得ません・・・・
で、実際のレンズで確認してもらうと・・・・
確かにそうなっている・・・・
(近方のプラスの度数はアウト方向に、マイナスの度数はイン方向)
で、その方が良い理由は?との質問には・・・・
「当社のレンズ設計は近方プリズムは考慮していない」
との見解で、何故そうなっているかの疑問を晴らしてはくれなくて、もっと詳しい方はいませんかの問いにも・・・・
がHOYAさんの見解でした。
僕がこの業界に入った約40年前にHOYAからバリラックスⅡの後継にV3という設計の累進が出たのですが、その設計は販売価格を抑えるために左右同じ設計にして左右角度を変えてインセットしてた記憶があるのですが、その事を質問しても・・・・・
NIKONさんからはまだ回答はないです。
で!上方の打ち消し線で消した部分の間違いが、インセット量で近方のプリズム量は買えられない!!が正解でした。
で当社での取引の無いレンズメーカーさんで、累進レンズでの近方のプリズム量を変えれるレンズがあるのですが・・・・
そのホームページを見る限り、それをする事のデメリットも書いてありました。
(メリットを優先するのかデメリットを優先するのかの問題ですね)
当店ではいろいろ考えてお客様に最適だと思うレンズを勧めさせていただいてます。
(ゆえにプレミアム的価格のレンズの販売実績はほとんど無いのです)
(決してそのレンズが良くないと書いている訳ではないです)
[コメントする]近視の内斜位
当店では両眼視まで考慮して、メガネの度数を決めています。
人間の眼が一つだけならすごく簡単なんですが、人間の眼は左右に二つあって、その二つが連動しあっているので、考慮する事が沢山あるのです。
近視・遠視・乱視・老視は片眼だけでも測定出来ますが、文字通り両眼視は両眼同時にしか測定出来ません。
基本的な両眼視機能検査というのは、左右眼の遠・近方の眼位・輻輳・開散・調節を測定します。当店では、度数測定する場合、全員にルーティンで眼位・調節は測定して、必要と思う方には輻輳力・開散力も測定しています(輻輳や開散力測定は目に負担がかかりますから)
今回ご紹介する例は「近視の内斜位」
測定データーの写真は小さいため、興味のある技術者の方は拡大してみてください。
まずは、内斜位で注意しないといけない事は、調節性内斜位
本当は内斜位では無いのに、近くを見る時のような目の動きで、調節と輻輳を起こして一時的に内斜位になっている状態の事。
これ、コロナ禍が始まった初期の頃、学校も休みになり外出も近視で家の中に引きこもって近くばかり見ていた小学生に出た事は、4年前のこのブログでも報告しております。
このお客様は18歳の男性で、二年前にメガネを作った時にも、内斜位の説明をしている事は当店のカルテにも記載されていました。
斜位とは、
寝ている時とか意識の無い状態には左右別々の方向を向いている左右眼が、同じ点を見る時に同じ方向を平行に見る事で、最初の状態と後の状態の差が斜位量です。
このズレが全くない人は本当にいなくて、誰でも多少なりとも調整をして物を見ています。
その左右のズレが凄く大きい場合は、眼筋に負担がかかる為、眼筋力を鍛えるか、
プリズムレンズで負担を軽減する事が出来るんです。
(このブログでこの図を何回使った事か(笑))
この図の場合は外斜位で、内斜位の場合は内側にズレています。
人間の眼の調整力は、寄せ目(輻輳力)のほうが、広げ目(開散力)より強いので、内斜位眼の方が厄介な眼ともいえるのです。
たぶん100年以上前に人間の眼の輻輳力や開散力を何百人も調べた外国の偉い方「モーガンさん」が出したデーター!!「モーガンの標準値」
当店のシステム機器の中にも収録されています。
輻輳力#9が19Δに対して、開散力#11が7Δ・・・・
確かに輻輳力が圧倒的に多いのですが・・・・・
100年間もこのデータを参考にしているのは、その後もさほど変わっていないせいなのか???
100年前の欧米人の状況と、現代の日本人の状況ではだいぶん違うと思っているのは僕ぐらいでしょうか(謎)
常々、斜位量をゼロに矯正してからの、現代人の輻輳余力と開散余力の数値、数百人分を集計したいと思っているのですが(真剣)そのデーターを纏めれたら「新マルヤマの標準値」となずけられるのでしょうか(笑)
(モーガンはプリズム矯正なしで測定しているので、内斜位者より外斜位者の方の人数が多ければ、輻輳余力は小さくなり、開散余力が大きくなってるはずです)
ただ、110年前の100メータ走のタイム「ドナルドリッピンコットが10秒6」現在の世界記録が「ウサイン・ボルト9秒58 2009年」と、人間の身体能力って、100年ぐらいじゃそう大きく変わらん気がする・・・(100mで1秒ってすごく大きいのでしょうが、たった1秒しかともとらえられます)
えっと、前置きの文章で頑張りすぎたので、本題に入る前に、次回に続きます(汗)
[コメントする]検査時の違和感・・・
メガネ店でメガネを作る為の検査の時
どこの眼鏡屋さんでもほぼ100%する検査
顎を乗せておでこを当てて、気球が見えるあの機械!!
オートレフラクトメーターと呼ばれる他覚機器
ググッテみると、
「動作原理 屈折測定用光束を網膜に投影し、網膜からの反射像をCCDカメラで受光し、演算処理することにより球面屈折力、円柱屈折力、乱視軸方向を算出する。 角膜からの反射像をアライメント系により検出し、自動的に位置合わせを行い自動的に測定を開始する。」引用
本当に優れもので、今じゃメガネの度数を決めるのに必須ですね!!
勝手に自動的に測るので、被検者に嘘(見えていても見えません等)は出来ません・・・
ただ、眼の中の水晶体は、膨らんだり(調節)しますので、あの気球がぼやけたりして、調節が入らないように工夫はされているのです。
しかし、完璧に調節が抜けるかと言えばそうでは無く、調節が残ったままの状態で測定されてしまう事があります。
下の写真を見て見て下さい。
番号4079の右眼の数値は「s-8.25c-1.75」
に対して番号4080の右眼の数値が「s-6.5c-1.50」
最初の4079のデータで測定しだして、何か違和感が・・・・
当店のシステム検眼器は自動で他覚値の数値から雲霧をかけた状態から測り出すようにオリジナルプログラムされているます。
単に調節が入った状態でオートレフされていただけなら、雲霧の状態でも矯正視力が出るのですが、そういう状態では無い違和感・・・・
どんな違和感かは言葉に出来ませんが・・・・
で、調節を外すような眼球ストレッチをしてから、もう一度オートレフを行って見ると、約1.75Dの差が、メガネレンズの段階(0.25)の差で言うと7段階の差・・・
上のレシートの時間で見ると、その間5分!?
最初のレフを当てて、自覚検査に入り、違和感を感じて、ストレッチを行い、確認のレフをあてた時間差・・・
なんか俺って凄い!!!
ま15年前から(13歳)から作り続けてくれたおかげで、過去のデータもある事から違和感が有ったのも事実。
これに気が付かないと、過矯正の強すぎるメガネの度数にもなりかねません。
(特に利き目(右目)の強い方の度数が強く出て、不同視の差も大きくなって疲れるメガネに)
過去のデータがあったのでその後の違和感は無かったのですが、まだ調節が抜けきっていない違和感が有る場合は!!
(↑別の方8歳の過去に使った画像です)
調節微動を他覚的に測定できる機器も当店には完備されています!!!
(他覚的にピントフリーズ状態を考察出来ます)
ピントフリーズとは、
近くを見る時に水晶体を膨らませてピントを合わすのですが、近方視を酷使する事により水晶体が元の状態に戻らず膨らんだままの状態
最近の考え方だと、この状態が続くと水晶体を膨らます毛様体筋が耐えられず?
眼軸が長くなるという研究結果も・・・
強度近視のはじまりですね。
スマホ等近くばかり見るのじゃ無く、屋外に出て狩に出かけましょう!!
話を戻してこの方の左眼の乱視が気になりますね・・・・
当店には秘密兵器の機器がまだあって・・・
(全然秘密にはしてませんが)
最初の他覚値のレフケラでは、ほぼ角膜乱視と出ているのですが・・・・
OPDスキャンでは、角膜乱視30%その他の乱視70%・・・円錐角膜0%・・・
ん~~・・・・
ただ、矯正視力はしっかり出ています。
よく見えるだけのメガネの度数は簡単に出せますが、快適に見えるメガネの度数はそう簡単ではありません。
当店では、快適なメガネを作製するために、日々精進しています。
ので、出来たら当店でメガネを買ってね(笑)
[コメントする]お勉強会
国家検定「眼鏡作製技能士」の実技試験には「視力の測定」「フィッテング」「レンズ加工」があります。
メガネ店はメガネを販売するのはもちろんですが、プライスレスな上記の3点もとても大事なことから、国家試験の実技の項目に入っているのです!!
眼鏡は、「だだ見えるだけ」「ただかかっているだけ」「ただフレームにレンズが入っているだけ」でも眼鏡なんですが、快適な眼鏡となると、そう簡単ではないのです!!!
当店は当然どの項目にも手を抜く事のないだけでは無く、最高な状態で顧客様にお届け出来るように、日々努力を惜しむことの無いように頑張っています!!
今回はその中の「フィッテング」の勉強会です!!
閉店後にも及ぶため、まずは腹ごしらえです。
折角ですので、老舗料亭のお弁当!!
お弁当も良い仕事してますね~~!!!
(鯖江の中松さん(料亭カフェ茶癒))
(嫁の実家でもあります)
(豪華なお弁当も会議費で経費で処理します)
(ホワイト企業ゆえ残業代もでますよ)
腹ごしらえをしてから・・・・
横田流フィッター(店長)が講師になり・・・・
僕の顔に練習用フレームを僕の顔にフィッテングしていきます。
同時に4人の被検者になる事で、僕自身も色々体感出来て凄く参考になりました!!
段々良い感じになって行く事や、ある程度良い感じだったのが違う箇所をフィッテングしたとたんバランスが悪くなったり・・・・(笑)
人間の鼻1つと両耳があれば、メガネをかける事は出来ますが・・・・
人間の顔は千差万別で、気持ちよくメガネかけるには、細かい微調整(フィッテング)が必須になります。
当店でお買い上げいただいた方のメガネのフィッテング代は、当然メガネ代に含まれています!!
他店で購入したメガネのフィッテング代は・・・・・
スポーツ用具や靴や洋服などのフィッテングは購入の際に合わせるだけで良い事が多いのでしょうが、メガネの場合使用していると、曲げたり変形したりして都度修正が必要になる事が多い商材な気がします。
(信頼できるメガネ屋さんで!なるべくなら当店で!!)
「フィッテング」「レンズ加工」「視力検査」なフライスレスな技術の原価は結構高かったりします。
こういう技術も将来はAIが出来るようになるのでしょうか。
[コメントする]フェイクニュース
いきなり、○×クイズです!!
問題1.
UV(紫外線)カットしていないサングラスは、瞳孔が開いたうえで紫外線が目の中に入る為危険です。○か×か?
問題2.
メガネのUVカットレンズは経年劣化して紫外線を通すようになるから、注意が必要です。
○か×か?
一見、UVカットされていないサングラスは危険に感じますネ
UVカットレンズは経年劣化で紫外線を通すように感じますネ・・・・
数年前にもネットニュースで流れてきた記事です・・・
ネットニュースで話題になるぐらいなら本当と思ってしまいますよね(笑)
多くの(一部の)メガネ屋さんも鵜呑みにして、注意勧告を出してたりしましたね・・・
また最近同じような内容のネット記事が出てたりしてて・・・・
当店の4年前のブログの画像を使わせてと、知り合いのメガネインフルエンサーさんがX(旧ツイッター)で取り上げたのが、ネットニュースに取り上げられました!!
https://otakei.otakuma.net/archives/2024012003.html?fbclid=IwAR1rwL_2mOlXc9y5qhCwzhk_RwkCAQhLWavrywlTUbu0IBP2hDoL4lyDJU8
https://article.yahoo.co.jp/detail/e4e2760c1d4aa72735f515451178248eebd33f96?fbclid=IwAR20BFCh8r-hmiPpqGjaUCdARws5i7WZ91dSsd5EDjVqq9NtQdLj8LLIvqs
https://news.yahoo.co.jp/articles/48819bcd5f77ede2f3c0fbcfdb11ca780a3afc30?fbclid=IwAR0pVfiSkp5LzWpDI2HJhgzwU_VwpY18kTgpIOISIi1yEhW-95tXFPCzYO8
サングラスが古くなると紫外線を通す??
↑4年前に書いた元の記事です!
ちゃんと実証実験をして、根拠のないデマを修正した良い内容ですね(笑)
(多くの方が興味がありそうな内容だと、プレスリリースの仕方によってはバズちゃうんですね(笑))
冷静に考えれば、瞳孔が開くような濃いカラーのレンズで、バンバン400㎚ぐらいの波長の紫外線をバンバン通す事が出来たなら、光(学)の概念を変える大大大発明です!!
その技術をもって、屋内で(人口灯無し)植物を育てる事も可能になるはずです!!
食糧問題どころかエネルギー問題をも解決できるはずです(笑)
上の方の取り上げられた記事の中で、百均や雑貨店のサングラスは違う事もあるみたいな注意が入っている記事もありますが・・・・本質を理解してない(汗)
あっ・・・
最初の○×問題の正解は、いずれも×でした!!
じゃサングラスの横から入って来る紫外線は!!と言う方もいるかもしれませんが、サングラスをかけていない事と比べると雲泥の差です。
「ブルーライトカットレンズが近視抑制を阻害する」という眼科学会からの発表も、このブログである程度否定してました。
(過去ログを検索してみてください)
(長い物には巻かれた方が良いのでしょうか)
コロナ禍の初期の頃にトイレットペーパーがスーパー等から消えた事もこのブログに書いた記憶があります。
人間の脳は、思い込みで行動してしまうように出来ている事をご理解ください。
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