技術的お話
他覚検査 自覚検査 違和感・・・
当店のメガネの度数を決めるのは、他覚検査(気球を見るやつ)をして、その数値を参考にして自覚検査を行います。
他覚検査は文字通り、勝手に眼の中の屈折力と網膜までの距離を機械が測定し機械が割り出した適正と思う数値を機械がはじき出します。
一番左のレシートの紙が他覚検査の紙・・・
真ん中が自覚検査
他覚検査後にクロスシリンダーで乱視の度数や軸度を探っていくのですが・・・・
ん・・・・??
違和感が・・・・
因みにクロスシリンダーとは、
このようなレンズを反転して測定していくのです。
原理は、赤い線の度数が-0.25 黒い線の度数が+0.25 のレンズで、その中間の所に回転軸があって反転するとプラス・マイナスが逆になり、少しずつ回転軸の角度を変える事で乱視の角度を決め、決まった軸にプラスマイナスを当てる事により乱視の度数を決めて行くのです。
(考えた昔の人は天才です!!)
当店のシステム検眼器には、この原理が組み込まれているので、このレンズ自体をクルクル回す事はしなくなりましたが、原理が解って測定していった方が良いのは当然です。
そのクロスシリンダーで乱視度数を測っていくと乱視度数は少なくなって行くのに視力は落ちていく・・・・なんか変な違和感・・・・安定しない乱視・・・・
当店の他覚機はケラトメータも装備されているので、角膜乱視を見て見ると、角膜乱視は全部の乱視量に比べて少ないので、クロスシリンダーで乱視の度数が減って行くのは不思議では無いのですが・・・・
他覚検査⇒自覚検査、最初の他覚検査から約10分後には、もう一度他覚検査をし直しています・・・
それが、コレ
勝手に角膜頂点に焦点を持っていくオート測定機能を外して、角膜頂点の上方、中心下方と測定していくと、左右眼共に角膜の下方地点の乱視が強く出る(赤字の地点の数値)
机上で習う乱視は、メガネのレンズと同じような綺麗な乱視ですが、実際の眼はそういう訳には行きません・・・・
それを他覚機で測定できる機器も実用化されていて、当店でも秋には導入する事が決まっているのです。
こんなやつ・・・・
しかし今はまだ導入してないので、アナログな装置(ウチワ)がある事を思い出し・・・
覗いてみたけど・・・・
よくわからん・・・・
後日検証してみると、のぞき穴にスマホのカメラを装着して画面をモニターにすると!!!
怖!!!
こんなに奇麗に写り込みます!!
このアナログな映り込みで目視で判断出来る角膜の形状ってどのくらいなんだろうか・・・・
こんな専門的過ぎるブログって凄く時間がかかる割に、お店の宣伝には全然ならない事は解っているんです(汗)
でも、ちょっとでも考えて度数を決定している事をお客様に解って頂く事と、当社スタッフに向けての内容だとスタッフに解って欲しいのと、一番は自分のアウトプットの場だと思って一生懸命書いています!!!
応援よろしくお願いします!!
[コメントする]枠替え
眼鏡小売り業界で言う「枠替え」とは、今使用しているメガネのレンズを使って、フレームを新しいフレームに入れ替える事です。
今回は、写真上のフレームから、そのレンズを用いて、下のフレームに入れます。
当然、今使っているフレームよりも小さく無いとレンズは使用できません。
今回は、強度近視の遠近両用・・・
強度のレンズ更に遠近両用となると、眼の幅(PD)レンズの角度(水平)左右の高さのズレは許されません。
右側のレンズは機械でギリギリかかって削れたのですが、左側のレンズは何故か機械の計測が出来ずにSOSが僕にきて、完全(フリーハンド)手摺りモードです・・・・
レンズを全く削ったらいけない部分と思いっきり削らないといけない部分があり、難易度はMAX!!!
(上のメガネと下のメガネの形状が違いすぎますね(笑))
ブログネタにしようと思って、写真を撮った状態はある程度全体の形を整えてる段階です。
(写真下のレンズ)
このような砥石でレンズを削って行くのですが、レンズ加工機の進歩で、レンズの面取りぐらいにしか手摺り機は使用しないため、荒摺りの砥石は付いていません・・・
(当店の最上位のレンズ加工機は面取りまでも加工出来ます)
現在僕自身はレンズ加工はほとんどやっていないのですが、ややこしい手摺り加工だけは回ってきます。
昔取った杵柄で!!!!
問題なく仕上がりました!!!
(フレームは鶴瓶さんも愛用しているユニオンアトランテックUA360)
全く削ってはいけない部分はそうなんですけど、その削ってはいけない地点のギリギリ両サイドはちゃんと削らないと隙間が出来てしまう事を削りながら思い出しました(笑)
この技術の承継は、座学だけでは伝える事は困難で・・・・その技術が必要な場面もそう多くないのです。
機械で削った右レンズは、全く削ってはいけない部分は、元のレンズの鏡面(艶出し加工)が残ったままですが、手摺りの左レンズは、薄皮一枚分(数ミクロン)削れてしまいます。
(この後両方のレンズをしっかり整えます)
国家検定「眼鏡作製技能士」の実技試験にもレンズ手摺り加工の試験があるのですが、難易度は・・・・
よく物づくりの現場で「職人の技術」の話が出てくるのですが、近い将来にはテクノロジーがその上を行ってしまうのでしょうね・・・・・
[コメントする]フリーハンド手削り
メガネの強度プラスレンズは、ギリギリのレンズ径でレンズを制作した方が薄く軽くなるので、必須項目なんです。
レンズの度数は表面と裏面のカーブの差とレンズの屈折率で決まります。
上の図は、レンズ径を大きく製作した1番上のレンズを必要径にカットしたレンズが二番目のレンズで、最初から必要径で製作したレンズが4番目のレンズ。
表面カーブと裏面カーブが同じなので度数は基本的に同じです。
(厚みがある上のレンズは若干サイズが大きく見えますが)
最近は必要最小径で発注するのではなく、フレームの形状をトレースしてデータで送信すればフレームに合わせた最適なレンズを制作したうえで、フレームの形状にカットしたレンズが送られてきます!!
一番薄い地点はペラペラの薄さです!!
(ただし度数自体が強度なのでどうしても中心厚さが出てしまいます)
HOYAレンズの場合はHELP加工と呼んでいるのです・・・・
そのままピッタリ枠入れ出来るのが理想なんですが、どうしても微調整が必要になります。
(フレームより小さくレンズが出来上がるとレンズがフレームに収まらなく外れやすくなるので、だいたいが大きく出来上がって来たレンズを手で削って仕上げます)
大き目のレンズを無理やりフレームに入れると、レンズに歪が発生するためにHELPで製作したレンズは必ず手摺りが必須になります。
(削ってしまってあるレンズは機械で削る事は出来ません)
手摺り用の電着砥石は、主にレンズの面取りに使うのでV溝が端の方に切ってあるんですね・・・
レンズ厚があるレンズは一部だけにヤゲンを付けるためにV溝が必須なんです。
(僕の手削スタイルは裏面を右手側にするのですが、レンズの厚みが厚いために反対のスタイルで削らないといけません)
機械で削る場合は、レンズの形状を機械が記憶しているので、削ってはいけない部分は絶対に削りませんが、フリーハンドで手削りする場合は注意が必要なんです。
一定の力(圧力)で削ってしまうと、まず、角(カド)が削れやすく、薄い部分は凄く削れて、厚い部分はなかなか削れません・・・・
この感覚(角と薄い部分を残すように削る)を後輩に伝えるのは容易ではありません・・・・
特に最近は機械の進歩で手削りする機会がほとんど無いために、経験値を積むことも出来ません。
(眼鏡作製技能士では手削りの実技試験がありますが、そう難易度は高くありません)
今回の手削りの難易度は!!!!
ほぼマックス!!!!
(この度数でフレームがもっと角ばってメタルフレームでガラスレンズだったら難易度マックスですね)
[コメントする]10歳 スポーツメガネ
10歳の女の子が、ソフトボールをするときに見えにくいとの事で来店いただきました。
昨年出来た、国家認定資格の眼鏡作製技能士の1丁目1番地は眼科との連携
初めて作る小学生のメガネは眼科受診が必須になっています。
(若年令は調節力が多いので、(例、遠視なのに近視のメガネを作るとか)色々な注意が必要で安易にメガネを作れません)
お話を聞くと、既に眼科さんは受診していて、寝る直前に目薬を差す等の治療中らしい
(若年令は調節力が多いので、調節力を麻痺させる目薬だと思われる)
で当店でも視力測定
他覚検査(オートレフ)ではほぼ正視だが、裸眼両眼視力は0.5でした。
(その後(後日)見方を変えると視力が上がりました)
そこで思い浮かぶのが、思春期の女子に多い心因性の視力障害
(当店でも数年に1人ぐらい見受けられます)
が、片眼視力は良好でした。
雲霧状態から丁寧に度数測定をしていくと、遠視が出てきて眼位は内斜位
ここで考えないといけないのが、調節性の内斜位かどうか
雲霧程度では表に出てこないもっと強めの遠視があった場合には、見ようとすればするほど調節が入り輻輳がおこり内斜位の数値は大きくなります。
両眼視機能検査を真剣に勉強している方ならピンとくる事例です。
残念ながら眼鏡作製技能士には、両眼視機能の問題はほとんど出ません。
眼鏡制作技能士1級は、片眼の矯正とカバーテストまで・・・
両眼視機能とは、両眼で遠方を見た時の眼位と両眼で近方を見た時の眼位、調節した時の輻輳量、輻輳余力・開散余力まで考慮して度数を決めていきます。
1D調節した時に何Δ輻輳するか等々
この表によると10歳の調節力は13D
(0歳~10歳までの調節力は無限大(笑))
幼児の眼球は小さくて(眼軸も短い)角膜水晶体の屈折力は大人と変わらないため、調節力が大きく、遠視の外斜位が生物学的にも成長や進化を考えると理想的ともいえます。
話をこの子に戻して・・・・
オーダーいただいたメガネがこちら・・・
左右共+0.5D3ΔOUT
遠視度数を上げれば内斜位量は減りますが、(調節が残ったままだと)遠視度数を上げると視力が落ちます。
Δ度数と球面度数のベストマッチングを狙った度数で仕上がりました!
矯正視力は1.2あり、立体視や深視力も良好です!!
成長によって度数が変わる事が予想されるため、オークリーさんの5年間度数交換保証が付いた純正レンズでかっこよく仕上がりました!!
念のため調節微動の機械で測定してみると・・・
レフラクトの値がメガネレンズより弱いのですが・・・・
まだまだ遠視が潜伏してそうな波形です・・・・
ちなみに、二軒の眼科さんで目薬を差して検査しています。
(ブログの中に、遠視や近視や斜位の用語が出てきますが、メガネで矯正できる事は病気では無いと思っています。ただ眼鏡作製技能士の試験ではそうでは無いのでお含みおきください)
[コメントする]白内障手術後のメガネ
白内障とは、眼の中の水晶体の混濁が原因で視力が低下する病気です。
特に多いのが加齢に伴う加齢白内障です。
(僕が若い時に習った名称は老人性白内障だった気がする)
眼球は唯一外から直接観察できる臓器で、眼科医師が覗けば診察出来ます。
白内障の手術は、濁った水晶体を取り除き、人工水晶体と言われる度の付いたレンズを眼内に入れる手術で、最近では日帰りで行う眼科さんもありますね。
その眼内レンズには度数がありますので、その度数を決定する場合必ず患者さんの意見を聞かれます。
人工水晶体には調節力が無いため、遠くに焦点を合わせるのか近くに合わせるのか?
今までのままで行くのか?等々・・・
左右同一時期に手術する場合と、片方の眼だけする場合等があります。
その眼内レンズの度数を調整すれば、今まで近視で遠く(近く)を見るためにメガネをかけていた方が、メガネをかけなくても遠く(近く)を見えるように事も可能です。
ただ、度数が強いメガネをかけていた方が片眼だけ手術をする場合には、注意が必要です。
(片眼だけ眼内レンズでメガネが要らない度数の眼内レンズを入れると左右の度数差が付き過ぎる為)
で、今回の事例・・・・
88歳のおばあ様
8年前からの当店の顧客様です。
軽い遠視眼で、当時の裸眼視力は問題が無かったのですが、物が二つに見える複視状態との事で当店でプリズム度数が入ったメガネをご注文いただいております。
8年間で5本のメガネをご注文いただいていて、徐々にプリズム度数を増やしたメガネを注文いただいています。
約1年前に作っていただいたレンズが
これで、度数はS+0.5C+0.5AX180加入が+2.0のそう度の強くない遠近両用ですが、片眼で8Δ両眼で16Δのベースアウト(内斜位)のプリズム度数が入っているため、耳側のレンズの厚さが厚くなります。
でこの方(まだ入院中)が手術前に眼科医師に「遠くを見えるようにしますか?近くを見えるようにしますか?」と聞かれた時に・・・・「近くが見えるように・・・」と答えたそうです。
眼鏡作製技能士の方ならこの答えがどうだったかは直ぐに理解できるとおもいますが・・・
このおばあちゃんの周りの白内障手術をした方々は、手術後メガネ無しで良く見えるようになった方ばかりで、年齢的に近くをメガネ無しで見えた方が良いと考えるのは間違いではありません。
ただ、大きい内斜位(眼位異常)がある場合は、眼内レンズで屈折異常を修正しても、内斜位値までは変わりません・・・・
でも大丈夫です!!眼内レンズの度数に合わせたΔ(プリズム)メガネをかければ、遠くも近くもしっかり見えるはずなのでご安心いただき退院ごのご来店をお待ちしております。
(1年前の矯正視力は0.5ぐらいだったので、手術後に作るメガネはもっともっと視力が上がる事が予想されます)
ほとんどの方は大丈夫だと思いますが、特別な度数のメガネをかけている方は、白内障手術前にかかりつけ眼鏡店にも相談すると良いかも知れませんね!
(メガネが要らなくなることをあえて阻止しようとするメガネ屋さんはいない事を願いたい)
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